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目標としていた先輩の話

飛行機の仕事を辞めてからだいぶ経つのですが、いまだに時折、飛行機に乗っているときの夢を見ます。
穏やかなフライトでただ機内監視をしているだけの夢もありますし、客室部から飛行機に向かう道順がわからなくなり、
空港内で迷子になって焦る夢など(笑)。

いろいろなことを思い出す中で、必ず思い出す先輩がいます。

入社して間もない時期。
一人ではまだなかなか完璧に仕事ができないものですから、日々、不安と緊張との中で仕事をしていた頃。

その日のフライトは夏休み真っ只中。
客室乗務員11人、乗客525人満席のフライト。
私と同じ入社したての同期が2名いる、比較的若年層の構成でなるフライトでした。
チーフパーサーは7期上のベテランの先輩。
見た目からお優しそうで、素敵な方だと事前の情報を方々から耳にしていました。

「プリブリーフィング」と呼ばれる客室乗務員だけの事前ミーティングがあるのですが、
その際、航路や気象状況、考えられる客層への対応など、ひととおりの打ち合わせが終わったあと、
チーフパーサーの先輩が「最後に・・・」とこうおっしゃられました。

「今日は比較的若年層の客室乗務員によるフライトですが、ひとりひとりが訓練を受けてここにきています。
お客様から見れば、だれが若くてだれがベテランなのかなんてわかりません。
ひとりひとりがプロ意識と誇りをもって、フライトに臨んでください。
もし早急な判断が必要な状況が起こったとき、みなさんが一番いいと思う選択をしてください。
その結果、起こってしまったことに対しての責任はすべて私が負います。
今日も自信を持って行きましょう。」

と。

全員の士気が一気に高まりました。
感動しました。

そうだ。お客様を安全に快適に目的地までお連れするため、ここまでやってきたんだ。
と、そういう使命感を改めて認識しました。

大変忙しいフライトではありましたが、結果、何のトラブルもなく無事に終わりました。

それからのわたしはこの先輩のようになりたいと強く思い、いろいろな将来プランの選択肢
(成田客室部へ移動など)がありましたが、まずはチーフパーサーになることを目標にそこだけに焦点をあてて勤務していました。

5年後。
乗客288名乗り。客室乗務員6名うち入社2年目の客室乗務員2名。
羽田から一日で3便飛ぶ、勤務スケジュール。
夏休み真っ只中。全便ほぼ満席。

わたしは自分がチーフパーサーとしてのフライトで、先輩と同じ言葉を投げかけました。

「自信を持って保安を優先に一番良い判断を行ってください。その結果の責任はすべてわたしがとります。」
と。

やっと言えた。と思えた瞬間でもありました。

人は「出会い」によって大きく変わるものだと思います。
目標とする人が身近にいて、その人のようになりたいと切磋琢磨する。
そういう「出会い」を大事にできたら、限りある人生を深く美しく生きられると信じています。

また、わたしも「あの人のようになりたい」と思える人でありたいと思っています。
そのことを忘れずにまだまだ修行中ではありますが、これからも邁進してまいります。