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間接的注意喚起

わたくしがANAに入社して間もない頃。
新人訓練のお客様対応についての講義の際、一人の教官から実際のフライトであったお話を聞きました。

VIPフライトなどを担当されていた教官の先輩のお話で
「私の先輩のお話なので、だいぶ前のことですが・・・」と前置きがありました。

とあるVIPのお客様にご搭乗いただき無事に目的地まで到着した後、お席までご挨拶に行った時のこと。
当該のお客様の御髪(おぐし)が乱れていることに気づきました。
しかも、とても不自然な曲がり方。。。おそらく人工的な御髪かも・・・と思ったそうです。
そこで、その先輩はどうされたかというと、
「お客様、ネクタイが少し曲がっていらっしゃるかと。」
と言って、手鏡でネクタイをうつすようにして少し角度を上に御髪が見えるようにしたとのこと。

そうするとお客様ご自身がお気づきになり、そっと御髪をなおされたとか。

ご搭乗のお客様が飛行機を降りられた後もご無事にスケジュールをこなせるように、
また、側近の方も直接的なご指摘をきっとしにくいであろう、との配慮を咄嗟に考えた事例でした。

「間接的注意喚起」―これはWEB上で検索しても出てこないので、おそらく私だけが言っている文言かと思います。

「他のお客様のご迷惑になりますので静かにしてください」

というより、こちらが小さな声で話しかければ

「あれ、ごめんね、声が大きかった?」

と気づいてくださるお客様がほとんどでした。

コーチングにおいても同じことが言えます。
例えば、靴を踏んで歩いている指導対象者がいたとします。
「靴を踏まない」と注意するより「あれ?」と当該の靴を見るだけで、「すみません」と気が付くこともあります。

もちろん、直接的な指導も必要なことがありますが(危険なこと、命にかかわること)、
まずは間接的注意喚起をうまく用いて、良好な関係構築における指導を行っていく。
そのことが必要です。

そして、何よりも指導者が指導対象者の見本になるような、人格者でなければならないと考えています。

「あの先生の、先輩の、話し方が美しかった。」
「こうやって提出物を作成すると見やすいのか。」

など、指導者自身の行動が間接的注意喚起になることがあります。

少しの工夫でやりがいや喜びを感じられるように。
わたしはいつもそう思っています。

長崎は2、3日前から良い天気になりました。
まだ寒くなるのでしょうか。
大好きな春が来るのを一歩一歩感じながら。

さぁ、今週も楽しくいきましょう。