お仕事されているみなさん、
今まで、お仕事をしてきた中で、忘れられないお客様はいらっしゃいますか?
やすもとはもう何年も前に退職したのにもかかわらず、時折ふと思い出す、
忘れられないお客様がいらっしゃいます。
それはまだやすもとが客室乗務員になって3年くらいのときのこと。
日本の航空会社はどこも同じだと思いますが、妊娠中やご高齢の方、おケガをされている方など、
お手伝いが必要なお客様は優先搭乗、最終降機のご案内をしています。
比較的、役割の少ないポジション(勤務年数が短い)の客室乗務員がご搭乗、降機の際に、
お荷物などをお持ちして、お客様のお手伝いをさせていただきます。
その便は札幌から東京に向かう正午過ぎの便。杖をついておられるご年配の男性のお客様とその奥さま。
ご搭乗の際から、お荷物のお手伝いをさせていただき、到着地に着いてからは担当の地上係員のところまで、
奥様とゆっくりお話をしながら(ご主人は口数の少ない紳士でした)、ご案内していました。
ゲートの近くまできたところで、担当の地上係員が来たので、ご夫婦にお別れのご挨拶をしたところ、
奥様が私の名札をじっと見て「やすもとさん。あなたご出身は?」と尋ねられ、長崎です、と答えたところ、
「そう、遠くでおひとりでがんばっているのね。お体に気を付けて。
札幌で医師をしています、〇〇と申します。またね。」
とニッコリ声をかけてくださいました。
何回も経験したお見送りのシーンではありましたが、なぜ忘れられないのだろうと考えたときに、
お客様がわたくしに尋ねてくださったこと、お気持ちを寄せてくださったこと、
ご自分のことを話してくださったこと、この3点で思い出深い別れのシーンになったのでした。
杖をつきながらにっこり会釈してくださったご主人と、にっこり手を振ってくださった奥様の後ろ姿に、
しばらく頭を下げていたことを覚えています。
その後、お会いすることはありませんでしたが、ずっとお元気でご夫婦にこやかに過ごされていてほしい、
と時折思い出します。
接遇においては、第一印象はとても大事です。
ですが、「別れのシーン」も大変大事です。
良いシーンは余韻が残り、思い出になるからです。
やすもとはお客さまに教えていただきました。
お客さまに品物をお渡しするとき、打ち合わせ後、お帰りになるとき、上司からの指示を受けるとき、
部下から報告を受けるとき、その別れのシーンで、別れた後の印象の余韻がどう残るか、今後を左右します。
お客様がその場を離れるまでが接遇です。
相手がその場を離れるまでがコミュニケーションです。
またここで買いたい、またあなたに頼みたい、と思っていただけるように、
まずはアイコンタクトと笑顔を意識して別れのワンシーンを大事にしてみてください。
きっと何かが変わるはずです。