梅雨が過ぎ、本格的な夏の始まりを感じるようになりました。
ANAでは夏休みに入ると、ジュニアパイロットというお子様一人旅のお客様に
多くご搭乗いただきます。
お子様一人で飛行機に乗る、という大冒険をするわけです。
何度も利用して乗りなれているお子様もいらっしゃれば、
本当に初めてでドキドキ、わくわくしているお子様もいらっしゃる。
やすもとはそんなお一人お一人の表情を拝見するのが好きでした。
今日はかつてお会いしたジュニアパイロットのお客様のお話です。
ある年の夏休み、夕方から夜にかけての少し遅い便に、10歳くらいの女の子の
お客様がお一人でご搭乗されました。
初めてのジュニアパイロットとしてのご搭乗で、遠くにお住まいのおじぃさま、
おばぁさまに会いにいらして、その帰りの便でした。
口数は少ないけれど、問いかけにはきちんとお答えになり、ニコニコとかわいらしいお嬢さんでした。
その便はあらかじめ揺れることが予想されており、ドリンクサービスもできないかもしれない、
という事前情報がありました。
やすもとは後方担当で、最後方座席のお客様と通路を挟んで着席するポジションでした。
揺れの状況を考慮し、お子様おひとりでは心細いということで、その便のチーフパーサーの判断で、
急遽ジュニアパイロットのお客様を、空席だったやすもとの隣に移動するようコックピットに確認
(機体のバランスがあるため)、やすもとの隣にお座りいただくことになりました。
案の定、フライト中は揺れる揺れる。
横揺れが続き、乗り物酔いも含め心配で、「こわくない?」と、当該のお子様に声をかけると、
「だいじょうぶ」とニコニコ。
その後も着席したまま、しばらくの横揺れのあと、一度強く、縦に揺れました
(縦揺れの方が危険なのです)。
心配で思わず伸ばした私の手を、ニコニコとつないでくれ、揺れがおさまるまで手をつないでいました。
心細くないか心配でたまらない私に「大丈夫だよ」と励ましてくれるように。
無事に到着地に着き、「元気でね、またね」とお見送りをしたところ、
ペコリと頭を下げ、手を振ってくれた、そのジュニアパイロットのお客様の後ろ姿を見ながら、
頼もしさを感じたエピソードでした。
お客様と接することでお客様から元気をいただたく―そして自分が楽しいと思える仕事にする。
当方の経営理念のひとつ、「自分が働きやすい環境をつくる」。
この考えが生まれたのは、たくさんのお客様とお会いして、
たくさんの励ましをいただいたからこそでございます。
あのときのお嬢さんも、すてきな大人へと成長されているだろうなーと
思いつつ、今年もまた夏のはじまりを感じています。